クトゥルー神話もの海外コミック
もはやこのblogは何ヶ月かに1回海外マンガのレビューが載る感じになっておりますが、今回はあれこれ読んでいたクトゥルー系海外コミックのメモがたまったので、そのあたりを簡単にご紹介したいと思います。(私自身が得意でないため長編アメコミはちょっと手が出せず、単発ものばかりです。)
まずは、御大H・P・ラヴクラフトが主人公に据えられた作品から。
Young Lovecraft
- 作者: Jose Oliver,Bartolo Torres
- 出版社/メーカー: Kettledrummer Books
- 発売日: 2012/04
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
すでに私のtwitterでご紹介済ですが、ハーウィことH・P・ラヴクラフト少年を主人公としたコミック・ストリップです。英訳版が2巻まであり、元はスペイン語で書かれてて現在既刊3巻。スージーちゃんはそのコミックのヒロインで(元ネタはスージー・スー)、主人公がかすむくらいにキュートなのですよ。英語版ブログでもちょろっとだけ最初のへんが読めますが、 スージーちゃん出てこないので、スペイン語に自信ある人は元ブログへ! スージーちゃんまじパンクかわいい(※この感想にはパンクっ娘に対する500%の補正が含まれています)。
しかしせっかくなので Young Lovecraft を布教せんとリンク+簡単な訳(チョイスは恣意的)をtwitterのときに作っていましたから、ここで再録を。リンク先の原語ブログで絵が参照できます。
(「もじぴったん」みたいなワードゲーム中のふたり)S「"OSIRIS"、17点」 H「"ZXLYGSTNH"、82点とトリプルスコア」 S「何だよ"ZXLYGSTNH"って!」 H「こいつは古えの神様で……」
El Joven Lovecraft: Tira 74
H「スージーに今日は風邪で学校休むって言って来て」 S「えっ!? ハーウィが末期の癌で瀕死?」 S「ハーウィ、水くさいじゃん! あたしが看取ってやるからさ!」 H「何て伝えたんだよ!」 G「オレさま、まだお前らの言語が不慣れでな」(続く)
El Joven Lovecraft: Tira 113 (y gran orgullo)
H「癌じゃないよ、このグール犬何でも大げさに言いやがって」 S「え……」 H「面倒かけてごめんな」 S「うん……」 S「じゃあ注文してたかわいい喪服キャンセルしなきゃな……」
El Joven Lovecraft: Tira 114
スージーちゃん超かわいい。ちなみに1巻にはハーウィとスージーちゃんがビヤーキーに乗ってポオの墓参りをするっていう何だかそれっぽい長編エピソードも入ってますよ! 1冊いかがですかそこのあなた!
- 作者: Jose Oliver,Bartolo Torres
- 出版社/メーカー: Kettle Drummer Books
- 発売日: 2012/04/01
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
- 作者: José Oliver Marroig,Bartolo Torres Prats
- 出版社/メーカー: Diábolo Ediciones
- 発売日: 2011/04/01
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
The Strange Adventures of H. P. Lovecraft
The Strange Adventures of H.P. Lovecraft 1
- 作者: MAC Carter,Tony Salmons,Adam Byrne
- 出版社/メーカー: Image Comics
- 発売日: 2010/07/13
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
内容・雰囲気を簡単に言い換えると、「『事件記者コルチャック』の主人公がラヴクラフトだったら」という感じ。異形による事件が起こって主人公が巻き込まれ、周囲にまったく信用されないながらも、最後になんとかぎりぎりそいつを撃退する、という。ノワールな雰囲気のなかをハードボイルド(で売れない作家で冴えない男)なラヴクラフトがモノローグ満載で動いていくのですが、クリーチャーの出てくる2時間もののTVムービーを観ているようで、物語の起伏やエンタメ性もじゅうぶん、読んでいると結構楽しめます。
ただラヴクラフトってことで例の容貌容姿をイメージしちゃいますが、全然違ってやっぱりハードボイルド系の顔立ちで、腕っ節もそこそこ。史実的正しさとかはあんまり気にしない方がいいです。amazonでは「1」とクレジットされてますが、残念ながら続編は出ておりません。公式サイトはこちら。
Howard Lovecraft and the Frozen Kingdom
Howard Lovecraft and the Frozen Kingdom
- 作者: Bruce Brown,Renzo Podesta
- 出版社/メーカー: Arcana Studio Inc
- 発売日: 2010/03/15
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
キッズ向けクトゥルーコミック! 氷の国への冒険といえば、アンデルセンの「雪の女王」やドラクエVでおなじみのモチーフですが、それをクトゥルー神話でやったらどうなるか、というもの。お話としてはキッズ向けの1時間アニメみたいな雰囲気で、グロもホラーも大してありませんが、それでも筋や展開・サプライズなどはちゃんとダークでそれっぽい。表紙に最近のCGアニメ風で描かれているのが主人公のハワードとペットにした異形の〈スポット〉、ただし中身の絵柄とはちょっと違うのであしからず。続編に『Howard Lovecraft and the Undersea Kingdom』があります(未読)。
Necronauts
Thargâ?™s Terror Tales Presents Necronauts and Love Like Blood (Tharg's Terror Tales Presents)
- 作者: Gordon Rennie,John Smith,Frazer Irving
- 出版社/メーカー: 2000 AD
- 発売日: 2011/10/18
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
作品集のなかに収録された50ページほどの話ですが、ラヴクラフトが重要な登場人物として出てきます。白黒のかなり癖のある作画。せっかくこの4人が揃ったのだから、もうちょっと長い話が読みたかったな、とも思いました。
と、ここまでがラヴクラフトが登場人物のアメコミ。ここから先彼は出てきませんが、最近の単発コミックでクトゥルー神話を扱ったものをご紹介しようと思います。
The Five Fists of Science
- 作者: Matt Fraction,Steven Sanders
- 出版社/メーカー: Image Comics
- 発売日: 2006/05/17
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
こちらも少しtwitterで紹介しましたが、ニコラ・テスラの作ったスチームパンクな巨大ロボに、のちノーベル平和賞を取る女史が乗り込んで、J・P・モーガン目論むクトゥルー的な異形の復活をぶっつぶす話。あらすじに書いた人物名を見ればわかるように歴史上の変人しか出てきません。話としては、ときどきグロが入りますが深刻にはなりすぎず、作者がロボット物が大好きからか要所々々を押さえてて、映画の文法で作られてることもあって、結構コミカルで意外と悪くない。カナダあたりで映像化されてアルバトロスあたりが日本語版DVDを出してくれたら絶対買います。この内容ならシリーズ化もできるっ!(ちなみにamazonの表紙は古い版ので今のとはちょっと異なりますので注意。)
ちなみに原作者さんのサイトにプレビューがありました。巨大ロボットもちら見え。
Neonomicon
Alan Moore's Neonomicon (Avatar)
- 作者: Alan Moore,Antony Johnston,Jacen Burrows
- 出版社/メーカー: Avatar Press
- 発売日: 2011/11/08
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 3回
- この商品を含むブログを見る
「ウォッチメン」などでおなじみのアラン・ムーア原作によるコミック。「『Xファイル』のクトゥルー神話版」というか、『Xファイル』の完全オマージュ。登場人物から〈過去の事件〉といった小道具の使い方にシナリオの進み方、それだけでなくどんでん返しや物語の結末まで、ひとつひとつがわかる人にはわかるくらいXファイル。主人公ふたりの声が小杉十郎太と相沢恵子(セルビデオ版)で聞こえてきて違和感がないくらい。そこそこ面白いんだけどそのせいでオリジナリティがなくなってしまってるのが残念。内容・絵柄は少なくともR16(もしかしたらR18でもいいかも)なので購入される際はご注意を。2011年のブラム・ストーカー賞を受賞してます。
North 40
- アーティスト: Fiona Staples
- 作者: Aaron Williams
- 出版社/メーカー: Titan Books Ltd
- 発売日: 2011/01/28
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
表紙からクトゥルー神話風のロードムービーが始まるのかな、と期待していたのに、ふたを開けたら片田舎の小さな町でのパニック群像劇。しかも原作者の力量不足からか説明のバランスが悪く、作画の描き分けも微妙。ウォーキングデッドを引き合いに出して褒める裏表紙の煽りはむしろウォーキングデッドの方に失礼。きつい口語米語とグロ描写くらいしか見るべきところがないかも。
Arkham Woods
- 作者: Christopher Rowley,Jhomar Soriano
- 出版社/メーカー: Seven Seas Entertainment Llc
- 発売日: 2009/02/03
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
これはちょっと変わり種でアメコミではありません。日本のマンガフォーマットで作られた、右開き200ページ超の単行本! 作画は外務省主宰の国際マンガ賞第1回ファイナリストのジョマール・ソリアーノで、この作品で第3回同賞に入賞しました。浦沢直樹に影響を受けたと思われるタッチで、開けてはいけないものを開けてしまった若者たちの過ちと責任を描いています。アメコミが苦手な人は英語もそんなに難しくないので、この本から読んでみてもいいかも。あとどうでもいいことですがニャルラトホテプがイケメン。(これも1とクレジットされてますが1巻完結です。)
と色々と紹介しましたが、モノによっては Amazon.co.jp で手に入れづらいものもあるかもしれません。その場合は、本国 Amazon か英国の Book Depository には在庫があったりもするので、カードがないといけませんが、そちらを探してみてもいいかも。