Baker Street Bakery > パン焼き日誌

ある翻訳家・翻訳研究者のサービス残業的な場末のブログ。更新放置気味。実際にパンは焼いてません、あしからず。

翻案「ゆかいなサンタになる方法」公開

以前にも少し触れましたが、進行中だったフランク・ライマン・ボーム「サンタクロースがさらわれちゃった!」の翻案作品が完成致しましたので、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスにて公開致します。

「ゆかいなサンタになる方法」
今年のクリスマスは――中止!?
クリスマスを前に、世界じゅうで多発するサンタクロースしゅうげき&ゆうかい事件! そのときひとりの少女が取った行動は……「自分がサンタクロースになる」こと! 現代社会に送るハートフルなクリスマスストーリー☆

 【公開は終了しました】

もはやある意味この季節の風物詩ともなった「クリスマス中止」ネタですが(今年の事業仕分けには笑いました)、元ネタの「サンタクロースにさらわれちゃった」も1904年の作品ながら同種のテーマを扱っています。そもそもクリスマス(サンタクロース)中止という行為(あるいは想像力)そのものがさほど新しいものなのではなく、たびたび創作でもテーマとして取り上げられています。

とはいえ、元ネタほどの無邪気な構図と解決が現代で受け入れられるとは思えません。「現代化」というものが翻案における(枷でもあり可能性でもある)問題であるのですが、原作の意図や構造を残しつつうまくこの点を乗りこえることが課題となるでしょう。

「クリスマス中止」があくまでも「中止」である以上、その振る舞いを額面通りに受け取ることはできませんし、またクリスマスを行う人が必ずしも精神的幸福に満ちているわけではなく、せめてもの支えや救いであることもあるわけで、そしてサンタクロースにおける子どもの論理(いる・いない)と大人の論理(やる・やらない)は違っているという、そのあたりを小学中級向けの児童文学文体に注ぎ込んでみました。

題材としての好き嫌いがあるかと思いますので、よろしければどうぞ。