Baker Street Bakery > パン焼き日誌

ある翻訳家・翻訳研究者のサービス残業的な場末のブログ。更新放置気味。実際にパンは焼いてません、あしからず。

アニメのこと

こんな枯れたブログに大勢の人が来ていてびっくりしました。自分から言うのも何ですが、ここには有益な情報は何もないよ! アニヲタでも現代思想系の人間でもなく、ただアニメを週に10時間くらい見てる翻訳家の放置気味ブログですから!
とはいえ最近はドラマCDの脚本とかも書くから一応業界人になってしまったのかしら。東京にはいないのでたぶんそんなこともないのだと思います。いまだに業界とか全然わかりません。

今は「アニメージュオリジナル」の2号をわくわくしながら待っているのですが、唯物論研究はさておき、批評的に面白いことが起こり続けているのかも、とぼんやりと考えています。これはあの雑誌の戦略的なことではなく、個人的な想いですが、山本寛監督にはアニメ批評にまつわる一種の「メディア」であってほしく思っていて、善かれ悪しかれ山本さんを媒介(むしろ発破?)として、批評や批評そのもののことをあれこれ語られている現状というのは(私はROMですが2chのスレを含め)、自分としては好ましいというか、期待通りになっているな、と思ったり。

そののちあれこれ考える機会があって、やっぱり批評と評論は別のものなのだろうな、と思いつつあります。アニメ言説において真面目な評論と刺激的な批評という区別をしたとき、氷川竜介さんや藤津亮太さんはアニメ評論家で、以前の更科修一郎さんはアニメ批評家だったのだろうと。そうなると「アニメージュオリジナル」も批評誌ではなく評論誌なのかもしれませんが。

それにしても東さんのブログにあったような枝葉末節を叩くから若手が育ってこないみたいな物言いには、ちょっと異議が。批評家の心理? それってつまり萎縮するってことでしょうか。待て待て待て。確かに東さんの世代の人に話を聞くと、そういう風潮(感覚?)があったことを教えてくれますが、私たちの世代に対してはどうなんだと思います。

確かに私は小川びいさんや氷川竜介さんに怒られてある種の反省はしましたが、別に萎縮したりはしてませんよ。さらに言えば、個人的な怨みもないし、今までと同じように、あの方々の書かれるものも面白く読ませていただいています。2chでの批判も同様です。ライターさんや読者に責任を押しつけるのは簡単だけど、若手の場合は単に「仕事が続かなくて」萎縮したように見えるだけなのじゃないかと思います。パーソナリティの問題ではなくて、ただ単に仕事の依頼がないだけの話で。もちろん叩かれて「ふざけんな許せねえ!」とさらに奮起する人もいるでしょう。それでも仕事がなければたぶん萎縮して見える、そんな感じのような気もします。

それに、翻訳家の観点からすれば、読者は見いだすものだし、需要は作り出すものです。本当に申し訳ないけど、私の能力ではアニメファンの方々やアニヲタのみなさまの満足するような批評や評論は書けません。けれども「おじいさん・おばあさんのためのアニメ」や「女性のためのアニメ」、もしくは「異分野アーティストの見るべきアニメ」などなど、そういうテーマなら書きたいし書けます。あるいは山本寛監督の言う「アニメにおけるデタラメって何だ?」みたいなことをわかりやすく書くことも。

「批評家の心理」があろうと「アニメへの愛」で乗り切りましょうよ。そこは。誰かその愛のある人間がいれば、少しでも今の状況は変わっていたんじゃないでしょうか。愛のある人が異分野にも営業をかけて、色んなところでアニメが語れるようになっていたら、ちょっとは違っていたんじゃないのか、そんなふうに思うこともあります。確かに私には知識が足りないけど、資格がないのはわかっているけど、それでも居ても立ってもいられませんよ! 私は老若男女が「アニメ」について、くだらないかもしれないけど、わいわい語り合っていてほしいですよ!

今、アニメにはアニメを語れる聖職者がいるし、神父がいるし牧師もいます。たぶん教皇もいるかもしれません。神学者はいると思います。私は信者ではないかもしれませんが、その方々を尊敬しています。でも、アニメの伝道師はいるのでしょうか? アニメの宣教師はいるのでしょうか? アニメを翻訳して伝えるトランスレータはいるのでしょうか?

私は山本寛監督がたとえ飯野賢治さんみたいだと言われようとそれでも好きです(もともと飯野さんも好きだったということもあるけど)。文化的には後発だったゲームが今やニンテンドーDSによって名実ともに「ファミリーコンピュータ」となって世の中になじんでいるのに、「どうしてアニメは?」みたいなことを思うことがあります。

淀川長治さんの話をすれば、彼は確かに映画の伝道師でした。ああいう人がいれば変わるというのはわかります。でも、ゲームには大伝道師はいなかったけれど何とかなりました。アニメは何がダメだったんでしょう? 愛がなかったとは絶対に思えません。うーん。とりあえず「アニメージュオリジナル」が届いたら読むことにします。