Baker Street Bakery > パン焼き日誌

ある翻訳家・翻訳研究者のサービス残業的な場末のブログ。更新放置気味。実際にパンは焼いてません、あしからず。

国立国会図書館調査立法考査局『著作権法改正の諸問題――著作権法案を中心として――』

先日、このようなものを手に入れました。どうやら旧著作権法から現行著作権法へ改正されたとき(1970年)の資料のようで、ぺらぺらとめくりながら読んでいると、現時点でも気になる記述がいくつか見あたります。

ありていに言ってしまえば、この本のなかで、今の著作権保護期間問題におけるような著作者(著作権者)と利用者の対立と調整という議論は、すでに「第四章 著作権法全面改正の基本的課題 一 著作物をめぐる関係者の利害を調整するための基本的態度に関する問題」という項で触れられています。

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mixiモバイルアプリ「青空文庫」

なるものが近頃登場して、何やらたいへんな人気らしいという話を小耳に挟みました(当該メーカの開発ブログ)。

同様の携帯向けサービスは色々あったのですが、これを「mixiのなかでやった」というのが勝因なのでしょうね。どう言ったらいいんでしょうか、今までは列車に乗って大きな町に行くと書店はあるけど、そこまでするのは面倒……という状況のなかで、ごくごく近所に大きな書店ができたので、みんなが立ち寄っている、というイメージでしょうか。

毎度のことではありますが、こういうサービスが始まったときに私が思うのは、「青空文庫にある私の翻訳も同じように使ってくれて構わないのになあ……」ということだったりします(笑)。せっかく青空文庫の他作品と同様に使ってもらえるようクリエイティブコモンズライセンスつけてるんですから、「あのときの王子くん」等々、もうちょっと積極的に(貪欲に)活用してくれないかな……と思ったりしないでもありません。(いつも仲間はずれにされるのでちょっとすねている。)

これが成功したとなると、mixi内での小説配信サービス(ケータイ小説執筆閲覧サービス)も割とありえてくるのかも、とケータイ小説家になってしまった身としては気になるものでもあります。

ボイジャー『マガジン航』

いささか旧聞に属することですが、いろいろとお世話になりましたボイジャーさんのサイトで『マガジン航』という「電子メディアと本の未来」について考えるウェブマガジンが始まっています。

同様の趣旨で始まった『季刊・本とコンピュータ』が休刊してもう4年も経ちますが、実は「本コ」当時はまだ私も少年でしたのでほとんど議論を追えておらず、最近になって図書館から借りるなどして読み返しております。

もちろん当時も「電子メディアと本の未来」に興味があったのに、どうして読んでいなかったのだろうと自分を振り返ってみると、どうやら単純に購読するだけのお金がなかった(あと近くの図書館が購読していなかった)ことと、「本コ」と青空文庫のあいだにちょっと距離があったからじゃないかな、というふうにも思います。と言うと語弊がありますが、一般化すると電子アーカイヴに対して「本コ」があまりつっこんだことを議論してなかった、ということなのかな、と。あるいは思春期にインターネットとパソコンが登場した少年の「本」観と、紙の本と出版社主義的なものを軸とした「本コ」が、当時すでにずれてしまっていた、とも考えられるかもしれません。

どうしてこんなエントリを書いているかと言いますと、私自身「本コ」や「航」に対して「興味があるはずなのにどこか関心がずれている」と感じてしまう自分に、戸惑いを感じているからなのだと思います。

いや、おそらくは(仕方ないのだけれど)徹底的な「中の人主義」(業界視点)というものが、一般ネットユーザや新しい書き手という「別の現場」を見逃しているからこそ、かつての少年は違和感を感じていた(いる)のかもしれません。

非常に申し訳ないながら、今の『マガジン航』は本コと同じにしか見えない(同じ轍を踏んでいる?)ところがあり、それゆえにどうか本コを乗りこえてほしいと激励するものであります。