Baker Street Bakery > パン焼き日誌

ある翻訳家・翻訳研究者のサービス残業的な場末のブログ。更新放置気味。実際にパンは焼いてません、あしからず。

アニメ評論/批評を書いてみること 4

そこからまた進んで、今度は年末年始あたり。だんだんと「じゃあどうせなら、あんまり人の知らないことを書けばいいんじゃないのか」みたいな気持ちになってきまして。アニメに対して何か資することができるのだとしたら、の話で。誰かが知っていたりわかっていたりすることを書いても、「うまく書くこと」で意味が生じるかもしれないけれど、それはそれ。

もうひとつ別の意味を探すとするなら、職業的にわかっていることを書いてみる、というのがあるな、と考えることもできるわけで。

ここを読んでくださっているごく少数の方々には知っておられる方とそうでない方がおられると思いますが、私は活動上、目の見えない人と接することが普通よりも結構多いのだと思います。そこで話を聴いていると、またひとつ変わったアニメの楽しみ方もあるのだな、と思いました。今度は、もっとエッセイじみたものではありますが。

それが次のエントリなのですが、さらにその次がKEY THE METAL IDOLの記事でした。あれを出したのは、やっぱりアニメを語るときに「画像」がないと映えないよな、というか画像ないとそもそも読んでくれなかったりするよな、と思いつつ、うちにはアナログ環境からならキャプチャ可能なので、試しにやってみたものでもありました。

むろん本当はアニメを語るときには動画の方がいいわけですが、それでもアニメ評論/批評をやるときに「動画」を使うというのは、まだまだ難しいところがあるように思います。たぶん本文の方でいくら引用要件を満たしていようと、アップするのはYouTubeなりニコニコ動画なりの動画サイトになるわけで、そこで「違反動画」だと判断されれば、本文の引用要件なんて無視して即削除されるでしょう。

今のところ次善の策としては「DVDの当該箇所の再生分数を記述する」というやつで、これについては今までに批評で使ってらっしゃる方がいらっしゃいますね。最近出た本で行くと、久美薫さんの『宮崎駿の時代―1941~2008』がキャプチャ画像と再生分数の併用です。前著の『宮崎駿の仕事』ではキャプチャ画像すら使えなかったことを考えると、ある種の「前進」がそこにあるようにも思います。

もし実際の本で動画引用をしようと思ったら、DVDを附録でつけてその中に引用箇所を収録するという方法がありますが、それが本当に「合法」たりえるのかどうか、おそらく判例がないので何とも言い難いところがあります。「アニメ批評のため」を考えれば誰かが人柱的に実験して裁判で争うなりするのが一番確実でしょうが、まあ誰もやらないし、やろうとしても出版社がその直前で止めるでしょう(同人なら誰かやるんだろうか)。

そうするといちばんリスクが低いというか、やってみやすいのは動画を簡単に引用できるインターネット空間で。てゆうかすでに自分のブログエントリにアニメの動画を引用する方はいらっしゃいますしね。アニメ評論/批評レベルかどうかはわかりませんが、少なくとも感想レベルではそういうことをやっている人はいるというふうに認識しています。ただ、それも本当に「合法」になるのかどうかは、法律家でない私には何とも言い難いところがあります(著作権方面の批評家としては問題提起が限界ですし)。

以上をまとめると、アニメを語る際に動画を使うことの問題点は、

  • 動画そのものの使用に関する問題(インターネットでは動画サイトのルールに抵触するしない、書籍ではDVD収録の可不可)
  • 引用要件を満たした場合に、本当に合法だと言い切れるか(前例は? 判例は?)

という感じでしょうか。

一般書籍ではキャプチャ画像使用の前例はあるんですよね、結構。つまり制作会社なり製作委員会なりを通して公式にもらったものではない画像を使った、という意味でもあるんですが(間違っていたら是非誰かつっこみを)。動画の場合は各方面の対応も含めて、まだよくわからないところがあるような気もします。

(つづく)