Baker Street Bakery > パン焼き日誌

ある翻訳家・翻訳研究者のサービス残業的な場末のブログ。更新放置気味。実際にパンは焼いてません、あしからず。

季報『唯物論研究』第110号「特集 この一冊 Part1」

アニメ特集のときにもお世話になった季報『唯物論研究』さんで、本のレヴューを書かせていただきました。大勢の方々が「この一冊」を選んで書評なさっていますが、私が選んだのは柳父章さんの『翻訳語成立事情 (岩波新書 黄版 189)』です。今ではその「愛」あるいは「恋愛」という言葉の考察について批判もありますが、やはり欠かすことのできない古典(基礎文献)として、柳父さんの一連の著書を取り上げたく、いちばん手に入れやすいこの本を取り上げました。カセット効果の解説と個人的に思うところが述べてあります。

このレヴューで私の意見として記したことは、まだ仮説にもなりきれていない単なる思いつき・直感のたぐいなのですが、今後将来的にこのようなことを実証的に調べてみたい(みよう)ということの現れでもあります。いただいてあらためて読み返してみると、助辞の「は」や「とって」が学校文法からは外れてるなあ(私の癖です)と思ったりもしますが、あしからずということで。

他にも翻訳という観点からは、水田洋先生がホッブズの『リヴァイアサン』について、翻訳の周辺にある個人的回想を書かれていて、たいへん興味深い文章となっていました。ちなみに私は水田先生の翻訳については、「別宮貞徳と消費者運動」の注釈でも触れたように、翻訳相対主義の観点から、対象とする読者が目的に合致する限りにおいては評価する姿勢を取っています。(別宮先生の功績を認めつつ、その点では批判的立場を取りました。)

季報『唯物論研究』について、一般への頒布は新宿の模索舎が取り扱っています。店頭もしくは通販(当該ページ)にて購入することが可能です。ご興味を持たれた方はそちらからどうぞ。