Baker Street Bakery > パン焼き日誌

ある翻訳家・翻訳研究者のサービス残業的な場末のブログ。更新放置気味。実際にパンは焼いてません、あしからず。

夏のアニメと青空文庫

芸術・娯楽作品のなかには、時として文学作品などからの引用がありますよね。そういったものが古く著作権も切れている場合は、ぜひ青空文庫に行ってみてください。その作品があるかもしれません。

たとえばこの夏のアニメだと、私もフジテレビオンデマンドで楽しみにしつつ見ている『青い花』。ちょうどこの二回が文学作品を題材にした演劇にまつわる話でしたね。

初等部の劇で出てきた『星の王子さま』(あのときの王子くん)は、もちろん拙訳で収録されております。前回での王子と鼻のシーンの演出は、これまでいくつかの映画等で見てきてはいますが、「こんなやり方でできるのか」と感心しました。花澤香菜さんとMAKOさんの演技も良くて、やはりこの作品はアニメ向きなのかもしれません。そういえば、前編では参考文献が池澤夏樹[訳]で後編では内藤濯[訳]でしたが、どうして変わったのでしょう?

中等部の『若草物語』も私の入力であります。本編で流れたのはちょうど終わり近くのハラハラドキドキするシーン。残念ながら『嵐が丘』は未公開。入力用の底本(三宅幾三郎訳・戦前・旧字旧仮名)は手元にあるんですが、ちょっと大変そうで(苦笑)。同訳者の戦後版は別の方の手が入っていて使えず、戦前版だとOCRにかからないから手入力……うーむ。できるだけ早く青空文庫に入れたいもののひとつなんですが。

他にもTBS系(関西ではMBS)で放送中の『大正野球娘』の副読本としては、正岡子規の「ベースボール」を。斎藤茂吉の「子規と野球」や寺田寅彦野球時代」も合わせて読むと、黎明期の野球と子規のことがちょっとよくわかります。

本当は当時の野球のハンドブック(物語中でみんなが持っているようなやつ)を青空文庫に入れたいのですが、なかなかいいものが(古本屋等で)見付からなくて。小パンフレットみたいなものは、古書店古書市に出向いて、雑多に積み上げられた山から探さないと思うものが手に入らなかったりしますからね。

実は青空文庫には、こういう「個人で見つけた変なもの」が結構入っていて、一覧から拾い上げてみると楽しいです。子規の「ベースボール」と「闇汁図解」は私の個人的趣味ですし。これに習って、友人とやった闇鍋に大福を入れたら大顰蹙でした。

せっかく『宙のまにまに』がやっているのに、青空文庫に紹介できるような天文系のものがないのが残念。『化物語』が好きな人は、折口信夫井上円了あたりを読むと何か得るものがあるかもしれません。