Baker Street Bakery > パン焼き日誌

ある翻訳家・翻訳研究者のサービス残業的な場末のブログ。更新放置気味。実際にパンは焼いてません、あしからず。

田中辰雄・林紘一郎[編著]『著作権保護期間 延長は文化を振興するか?』

著作権保護期間―延長は文化を振興するか?

著作権保護期間―延長は文化を振興するか?

ThinkCのシンポジウムが元になった『著作権保護期間』、ようやく読了しました。シンポジウムを追いかけている人にとっては、中身自体はすでに既知のものなのですが、この本のために追加されたのが第5章の翻訳と、序章&終章。いずれも読み応えのある内容でした。これだけ客観的なポイントが押さえられていれば、たいていの感情論は世迷いごとで済ませられそうな気もします。フォーラムのひとつの成果として、これまでのまとめとして、この本が出たことを素直に喜びたいと思います。ありがとうございました。(そして一連の議論に携わる人、気にしている人には必携の本だと思います!)

さて、著作権の議論は、この本が出たことによって次のステップへ進むと思うのですが、それはすでにこの本のなかでも出ていて、本をお持ちの方はp16〜17を開いてください。そこに「[P2]利用方法の革新」というふうに出ています。作品がパブリックドメインになることによって、どのような利用の可能性があるのか、ということです。そのページにも書かれているように、この件は、この本では取り組まれなかった積み残しの課題です。

青空文庫の例がそこに挙げられているのですが、インターネットで本を読むということもそうであれば、フロンティアニセンさんの耐水性の本も、青空文庫のテキストを使って行われていることのひとつで、各所で行われている朗読・オーディオブックもそうです。そして今、私がやってる映画字幕とか、あるいはパンローリングさんでの仕事(刊行が遅れてますが)もそうなのだと思います。もちろん、ゴマブックスさんでの横書きの本も、リブロリアネットさんでの様々なタイプのオンデマンド本も。

このあたりに関しては、今度はおそらく私や青空文庫界隈が動かなければならないのだと思います(レポートの提出や、自らの実践も含めて)。今度、全国図書館大会で講演をすることになったのですが、そこでは、その「パブリックドメインの利用方法・利用環境」を射程に入れたお話をする予定です。著作権保護期間について話をするという案もありましたが、そのあたりは「新文化」さんですでに述べていることもありますし、むしろこちらの方が「今必要な話」だと思えたので、こちらを取りました。(それに図書館にはこちらの方がふさわしいかな、と。)

そのあたりは、講演が終わった後、色々と加筆しながら、しかるべき形で公開できれば、と考えています。それはブログで公表するかもしれませんし、どういう形になるかはまだわかりませんが……。(この[P2]の件に関してましては、いくらでもご協力しますので、何かございましたらお気軽にご連絡ください。)

そういえば、このブログはパブリックドメインでの実験を記録していくブログでしたね。今後も色々と頑張ります。